日中国交正常化50周年を記念して、11月16・17日、東京都写真美術館で中国映画『掬水月在手(邦題:水を掬すれば月手に在り)』上映会を国際儒学聨合会と共に当法人が主催しました。
本作は、中国古典詩研究の大家であり、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学や天津の南開大学で長年教鞭をとった国際派の学者・葉嘉瑛(よう・かえい、1924~)の波乱の生涯を、杜甫「秋興八首」をはじめ数々の美しい古典詩に重ね合わせつつ描いたドキュメンタリー映画。今回、日本での初上映となりました。
開幕式では国際儒学聯合会の劉延東会長(元国務院副総理)と当法人の福田康夫会長よりビデオメッセージが寄せられ、木寺昌人理事(元駐中国大使)が当法人を代表して挨拶をしました。また上映会に合わせ、国際儒学聯合会の陳来副理事長や本作の監督、プロデューサーも訪日し、上映後に観客に製作の背景や意義を紹介するなど、非常に有意義な交流が実現しました。
劇中の音楽は日本を代表する音楽家・佐藤聡明氏が担当し、日本の雅楽も取り入れられています。アジア文化を融合した本作は多くの観客の心を強く惹きつけました。多くの中国メディアも取材に駆け付け、中国国内でも広く報道されました。下記はその一例です。
人民中国「苦难铸诗魂——电影《掬水月在手》日本首映礼在东京举办」
網易「日本举行《掬水月在手》首映式和研讨会 有一插曲」
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主催: 国際儒学聯合会
〃: 一般財団法人日本アジア共同体文化協力機構
協力: 一般社団法人金色時代文化芸術協会
〃: 早稲田大学
〃: 南開大学
後援: 中華人民共和国駐日本国大使館
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*上映会の場では、当法人の福田康夫会長、木寺昌人理事、刈間文俊理事に書が贈られました。
〇唐代の詩人・于良史の五言律詩「春山夜月」。映画の原題『掬水月在手』の由来でもある。一聯ずつ訳すと、下記の通り。
「春山多勝事、賞翫夜忘帰」(春山は勝事多し、賞翫して夜帰ることを忘る)
春の山には素晴らしい景色が多く、それらを愛でていると夜、家に帰ることも忘れてしまう。
「掬水月在手、弄花香満衣」(水を掬すれば月手に在り、花を弄すれば香衣に満つ)
水をすくうと月が掌中に浮かび、花を弄ぶと香りが服に満ちる。
「興来無遠近、欲去惜芳菲」(興来たれば遠近無く、去らんと欲して芳菲を惜しむ)
興が乗れば遠さも気にせずどこまでも行き、立ち去ろうとしては芳しい花の香りを惜しむ。
「南望鳴鐘処、楼台深翠微」(南のかた鳴鐘の処を望めば、楼台は翠微に深し)
鐘の音がして南方を望めば、山深く鐘楼がかすかに見える。
〇極高明而道中庸
『中庸』第27章の言葉。訓読すると「高明を極めて中庸に道(よ)る」。君子は崇高な道理を極めつつも、日常の実践においては過剰さを避け、中庸を旨とする、という意味。「君子は徳性を尊んで問学に道(よ)り、広大を致して精微を尽くし、高明を極めて中庸に道り、故きを温ねて新しきを知り、厚きを敦うして以て礼を崇ぶ」。
*写真は陳来・清華大学国学研究院院長(右)と当財団木寺理事
〇里仁為美
『論語』里仁篇に見える。古来様々な解釈のある言葉だが、「仁徳厚い隣人のいる場所に住むのは素晴らしい」あるいは「仁徳に拠って生きるのが良いことだ」などと解される。「仁に里(お)るを美(よ)しとす」「里は仁なるを美と為す」などと訓読。
*写真は陳来・清華大学国学研究院院長と当財団刈間理事