国際儒学連合会による文明フォーラムの記事(邦訳)

人類運命共同体の構築に東洋の智慧を――中日平和文明論壇開催
2020/12/08公開

 12月4日、中日平和文明論壇が北京と東京でリモート開催された。日中両国の友好人士がオンラインで集まり、日中の文化交流、文明の相互参考をテーマとしてコミュニケーションを深め、新時代の要求に合った日中関係をいかに構築するかについて議論を交わした。双方は友好的交流と共通認識の強化、そしてアジアと世界の平和的繁栄のための連携と貢献という願いを表明した。

 このフォーラムは国際儒学連合会と日本アジア共同体文化協力機構により共催された。国際儒連会長の劉延東、日本の元首相で日本アジア共同体文化協力機構会長、国際儒連理事長の福田康夫などが出席し、あいさつを述べた。

 劉延東は、2000年にわたる日中交流史を振り返ると、平和友好が両国民の心の主旋律を形作っていたと指摘した。日中国交正常化以来、双方の共同の努力の下で文化交流は全面的に発展し、官民総出かつ多チャンネル・多形式の繁栄を見せてきた。現在世界は100年に一度の変動の局面と世紀の疫病の大流行とが相まって、国際情勢の不安定性・不確定性を顕著に増大させているが、国際情勢がいかに変化しようとも、日中間の平和友好・協力互恵という大きな方向は変わってはならない。双方が両国のリーダーによる重要なコンセンサスを着実に実行し、新時代の要求に合った日中関係の構築を積極的に推進することで、時代の流れに適応しなくてはならず、また地域と世界に目を向けることで、共に人類文明の進歩・発展を助け、人類運命共同体の構築に東洋の智慧を提供すべきだと説いた。

 劉延東は1980年代に自ら日中文化交流に携わった忘れがたい経験を振り返った上で、日中の平和・友好・協力こそが人々の望むことであり、大勢の赴くところであると述べた。また劉氏は両国の有識者に、その影響力を発揮して民間交流と文化交流を推進しつづけることで、国民同士の相互理解と親しみの醸成、両国関係の発展のために、必要な条件と環境を整えてほしいと呼びかけた。

 そのために、まずは伝統を尊重することである。深い歴史的・文化的源流を基盤とした文化交流を推し進め、歴史・文化や文化財保存などの領域における両国間の国際協力を強め、文芸・映像・アニメーション・ニューメディア・観光・展覧会などの大衆文化・新興文化産業の領域における交流と協力を強化すべきだとした。

 二つ目に、現代に立脚し、テクノロジー・教育・スポーツ・健康などの多層的交流を推進することである。RCEPが正式に調印される契機を利用して、東アジア地域の協力と一体化をより深く、より着実に推し進めるべきである。デジタルを活用した経済ガバナンスやデジタル化の恩恵の浸透により、互恵的でウィン・ウィンな関係の構築に新たな光をもたらし、また民間の機構・シンクタンク・有名大学などによるフォーラムやイベントの実施を促進して、多様な交流の中で友好と協力を強化していきたい。来年は日本で東京オリンピックが開かれる。2022年は日中国交正常化50周年に当たり、中国では北京冬季オリンピックが開催される。両国は互いに支えあい、オリンピック協力を紐帯としてスポーツの領域における両国間の多層的交流をレベルアップさせていかなくてはならない。

 三つ目に、未来に目を向け、長期的な視野を持ちつつ時代の課題に対応することである。「日中関係の世界的意義」について考え、共通認識を発掘し、相互信頼を強化し、対立を解消していくべきだ。中国の改革開放以来40年余りの間、日中は合わせて延べ150万人の留学生を相互に派遣してきた。そのうち120万人は中国から日本への留学生だ。新しい技術、新しいプラットフォームを通して、さまざまなルートから環境を整備することで、両国の青年の国境と時空を超えた誠実な交流を促進し、日中友好を代々受け継いでいかなくてはならない。

 福田康夫は、人類運命共同体の理念は非常に重要であると述べ、文化交流はまさに人類運命共同体を構築する重要な手段であるとともに、人と人、国と国との相互理解を促す架け橋であると指摘した。文化は生活に根ざしており、国境を持たない。古くから文化は非常に重要な役割を演じており、文化交流を通して日中両国は現在の良好な局面に到達した。両国の国民感情に対する相互理解を促進するために、文化は最も有効な道具である。両国が文化交流を深化させ、違いを超えて相手の文化を楽しみ、互いの民衆の心を近づけることで、日中の平和と友好を促進することを希望するとし、日本アジア共同体文化協力機構はこの目標のために努力していくと述べた。

 国際儒連名誉会長で著名作家の王蒙は、日中両国は海を隔てて向かい合った隣国として、文化上も相互に影響し高め合う関係、互いを理解して補い合い、利益を与え合う関係にあると述べた。歴史の中で中国文化は日本文化に栄養を与えてきたが、近現代における日本の近代的進歩思想は中国に栄養を与え返して、中国社会の変革と前進を促した。日本の友人たちと触れ合う中で、彼らの日中文化交流における誠実さと熱心さにしばしば深く心動かされた。日中両国は文化的に親近感があるために、両国関係は順調なときもそうでないときも、常に暖かい色彩を帯びてきた。見賢思斉、和して同ぜず、これらが今両国の文化が選ぶべき道であり、世界が互恵的でウィン・ウィンな関係を築くために欠くべからざるメインテーマだ。

 北京大学学長の郝平は、教育面の交流は日中文化交流の重要な基盤であり、日中関係を発展させる上で他にない役割を演じてきたと述べた。新型コロナウイルスの流行により教育モデル、イノベーションのパラダイム、交流のスタイルに変革が生じており、オンラインでの交流が全世界の開放的発展のニューノーマルとなった。全世界を覆う新型コロナウイルスの猛威や、保護主義・一国主義が世界にもたらす脅威に直面する中、日中両国の大学は手を取り合って前進し、感染症対策や気候変動など多くの先端的領域で協力を進め、テクノロジーを活用してより多くの良質な問題攻略の成果を生み出し、人類社会の持続可能な発展を共に推し進めていくべきだとした。

 日中友好協会常務副会長、前中国駐日本大使の程永華は、文化交流は日中関係の中で特殊かつ重要な役割を担っていると指摘した。日中の文化は互いに近く、通じ合っており、2000年の歴史の中で両国の文化交流は長い伝統を持っている。これは平和的共生と文明の相互参考の最良の実証だ。新時代の要求に合った日中関係の構築は、日中双方が近年の経験や教訓をまとめた上で、「4つの原則的共通認識」の基礎の上に、両国関係の長期的発展を目指して提唱されたものであり、この目標を実現するために双方は引き続き刻苦奮闘しなくてはならない。ポスト・コロナ時代を見据えた設計を行い、積極的に両国の人員往来を展開して文化交流を拡大すべきだ。互いのオリンピック開催を支援することで人員の往来を回復し、修学旅行などの形で青少年の交流を拡大することで、日中友好を支持する民意の土台をたえず強化することができるだろう。

 世界銀行の元副総裁・チーフエコノミストで、北京大学新構造経済学研究院院長の林毅夫は、東アジアの成功は経済発展の全段階でグローバル開放市場経済を利用することにあると述べ、政府が積極的に行動することで、各国がそれぞれの発展段階における比較優位を発揮すべきだと指摘した。その基礎となるのは、人々が勤勉・倹約・教育重視の良い伝統を持ち、政府が国民のための政治を行い、グローバル化の潮流が比較優位に基づいた経済発展を可能にすることである。「思考の道筋が進むべき道筋を決定する」。東アジアは極度に困難な条件の下で発展することに成功し、貧困なき人類運命共同体の建設に貴重な経験と考え方を提供した。

 日本の元文化庁長官・青木保は、料理から映像、文学に至るまで、文化の意味と領域は非常に広いと指摘した。中国の良い作品は日本でも非常に売れ行きがいい。良質な文化作品には人の感情を結びつける力があり、政治や経済には代えがたい独自の強みを持っている。21世紀に入り、東アジア各国は新しい文化の時代を迎えた。大型の文化施設が建設され、各国の文化が影響を与え合う程度も継続的に深まっていき、多くの文化的生産物が共に受容され、文化共同体もたえず増加している。このような状況の中で、日中両国の文化交流はさらに豊富なスタイルを取り入れ、より多くの共同文化を創造していくべきだ。

 日本の著名作家・養老孟司は、文化とは理性的社会の解毒剤であると述べた。現代都市人は大きなストレスに直面しており、芸術の慰藉を得て自然に帰ることを必要としている。現代社会はデジタル化の時代に突入しており、人は自然の一部から情報の一部へと変わってしまった。患者が病院で検査を受けるときも、医者は患者を理解することを必要とせず、検査のデータさえみれば事足りる。これはすでに世界的な現象であり、文化という解毒剤が求められている。

 日本の国際交流基金元理事長で元駐韓国・ベトナム・フランス大使の小倉和夫は、日中関係は両国間の関係のみにとどまらず、東アジア、ひいては世界レベルのものだと述べた。我々は世界を語る前にまず東アジアの状況を見なければならず、文化交流も東アジアの状況の下で考えなくてはならない。近年では中国の急速な発展と強大化、さらに国際環境のさまざまな変化を受けて、中国に対する日本の国民感情には楽観できない要素が存在しており、この問題は重視しなければならない。それゆえ国民同士の交流はとりわけ重要である。交流は文化の領域だけにとどまらず、例えば環境問題と文化交流を結びつける、社会の弱者同士の交流を強化する、ネットなどの新しい技術を運用するなど幅広く行い、一般国民も交流の成果を享受できるようにすべきだ。

 日本アジア共同体文化協力機構理事長で日本の前駐中国大使の宮本雄二は、日本と中国の間の感情を強めるには、文化を中心として中国人と日本人の感情を近づけなければならないと述べ、狭い意味での文化ではなく、企業文化や大衆文化、地方文化など広い意味での文化も含むべきだと指摘した。日中両国は共通の伝統文化を有しており、伝統的価値観の伝承を強化するとともに、若者たちの文化交流も促進しなくてはならないとした。

 日中双方の来賓は友好的かつリラックスした、楽しい雰囲気の中で充分な議論を展開し、友好的交流、思想の交換、共同発展の理想を表明しあった。国際情勢がいかにめまぐるしく変化しようと、日中両国は東洋の智慧を吸収しながら、文明の衝突と利益競争に新しい解決策を提供し、人類運命共同体の「最大公約数」を探し求めるべきだという点で、双方の意見は一致した。日中両国の文化交流は数千年間連綿と続いており、双方の文化や思想の中には源流を同じくするものが多くある。文化面における日中のこのような親近感は、対話と相互信頼の土台となっており、両国文明の新たな発展に原動力を与えている。両国はハイレベルな文明対話を促進し、理解と共通認識、相互信頼を増進させ、日中関係と地域の発展、世界の平和と繁栄に一層貢献していかなければならない。