新日中文明フォーラムの概要

「新日中文明フォーラム ~相互理解の深化を求めて~」

 日本と中国の間に文化を語り合う場が必要であるとの判断から、「新日中文明フォーラム」を企画した。本機構の福田康夫会長と国際儒学聯合会劉延東会長との数度の打ち合わせの後、両組織の共催により、2020年12月4日に東京(帝国ホテル)と北京(北京大学英傑交流センター)の両会場をオンラインで結び、第1回会合を開催した。
 劉延東会長は2018年まで国務院副総理として、広く、文化、教育、医療等の分野を担当し、文化関係の責任者をつとめた。国際儒学聯合会は、1994年に設立された儒学関係団体からなる国際組織であり、初代理事長はリークワンユー・元シンガポール首相であり、本機構会長福田康夫が現理事長に就任している。
 共催のあり方については、両国関係者の協議により世界を視野に入れた日中文化の相互理解の深化及び両国関係の平和発展の促進という共通項の基本枠を確認した。会議の名称は、それぞれ自国語でフォーラムの目的を最も正確に伝えるものとすることにし、直訳形式はとらないことにした。フォーラムの進め方については、お互いにやり易い形で始め、何度か実施していくうちに、最適のやり方を見出していくこととなった。
 
 以下、日中双方の参加者および日本側発言の概要をご紹介する。中国側の発言については国際儒学聯合会のホームページに掲載されたものの日本語訳を見ていただきたい。
 
1.日本側の参加者
日本アジア共同体文化協力機構会長 元内閣総理大臣  福田康夫
大阪大学名誉教授 元文化庁長官           青木保
東京大学名誉教授 京都国際ミュージアム名誉館長   養老孟司
国際交流基金顧問 元駐韓大使            小倉和夫
日本アジア共同体文化協力機構理事長 元駐中国大使  宮本雄二
日本アジア共同体文化協力機構参与 法政大学名誉教授 王敏(司会)

2.中国側参加者
国際儒学連合会会長 元国務院副総理         劉延東
作家 元文化部部長                 王 蒙
北京大学学長 元教育部副部長            郝 平
北京大学国家発展研究院名誉院長、教授        林毅夫
中日友好協会常務副会長 元駐日大使         程永華
国際儒学連合会常務副会長 元文化部副部長      丁偉(司会)

3.日本側発言概要
 福田氏:会議の開催経緯説明
 青木氏:40数年以上の調査研究の成果に基づき、アジア特に日中の間にお互いに共有できる「若者文化」の存在を指摘し、映像、漫画アニメ、音楽等共有領域の再創造・再生産を継続的に発展させていき、東アジア発の文化として世界に愛好受容されることを望みたい。「新日中文明フォーラム」の指針力を期待する。
 養老氏:現代8割の人が都市に住み、都市の中毒というか病というものは全世界的になっている。AI、情報化の時代というのは理性的な世界の行き着く頂点みたいなもので、文化というものは、そういう意味では、理性的な社会にとっての解毒剤である。日中、アジアに広がる病に処方箋を出したい。
 小倉氏:日本の中国に対する国民感情の悪化現実を直視し、国民同士の交流と文化交流は大きな意味を持つ。ただし、中国文化も日本文化も世界人類のものである認識を喚起したい。世界共通のものがそもそも文化にあるという意識の樹立が必要である。
 宮本氏:幅広い意味での文化とはほとんどの我々の生活がカバーするので、国民を近付けられる。若者同士は多くの共通点を持つようになっており、今や日中とアジアの青少年の文化交流を大々的に進める絶好のタイミングである。それを支えるものが、若者文化、日中の伝統的文化と価値観と都市文化の共有である。
 終わりに福田氏が、文化というのは多国間の国民の気持ちを近付けるための有用な材料・道具を提供でき、その交流は運命共同体を作るためにも有効な通路であるゆえ、今後も文化面ならではの視座を新日中文明協力の模索に生かしていこうと纏められた。また、王敏が進めた日本における禹王碑を中心とした治水信仰について現存形態(約140点)の調査の事例を紹介した。

 新文明を探る模索に終わりはなく、探求の意志と行動が不可欠である。これは、参加者の共通の思いである。この度のフォーラムから、参考となるヒントを手繰り寄せることができることを願っている。